結論:法文は5年、経過措置中は当分の間3年
労働基準法109条は、労働者名簿、賃金台帳のほか、賃金や労働関係に関する重要な書類を5年間保存するよう定めています。厚生労働省のQ&Aでは、出勤簿やタイムカード、始業・終業時刻の記録も対象に含まれると示されています。一方、同法143条の経過措置により、保存期間は「当分の間」3年です。
そのため、2026年8月時点で最低限確認すべき期間は3年ですが、制度の本則は5年です。古い案内だけを根拠に「常に3年」と固定せず、廃棄前に厚生労働省の最新情報を確認してください。賃金請求や退職金、個別の紛争などで3年を超えて記録が必要になる場合もあるため、保管余力がある職場は5年を基準に社内ルールを作ると移行にも対応しやすくなります。
保存期間はいつから数えるのか
保存期限を決めるには、書類ごとの起算日を揃える必要があります。タイムカードなど労働時間の記録は、原則として最後の記載がされた日が起点です。ただし、記録の完結日より賃金の支払期日が遅い場合は、その支払期日を起点とする扱いがあります。締日だけを見て一括廃棄すると、必要な期間を満たさないおそれがあります。
実務では、各月の箱や電子フォルダーに「対象期間」「最終給与支払日」「廃棄予定年月」を記載します。たとえば月末締め・翌月25日払いなら、勤務月だけでなく翌月の支払日も確認して廃棄予定を決めます。判断が難しいケースは、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士へ確認してください。
紙は「事業場・年・月」の順で探せるようにする
紙のタイムカードを従業員ごとの封筒へ何年分も入れると、ある月の賃金台帳と全員分を照合するときに時間がかかります。最初に事業場、次に年、最後に月の順で分け、月の中をスタッフ番号順に並べると、給与計算の資料と同じ単位で探せます。退職者だけ別の箱へ移すより、勤務していた月の並びを保つ方が記録の連続性も分かりやすくなります。
箱の表面には従業員名を並べず、「○○店・対象年・1〜12月・廃棄予定年月」のような管理情報だけを書きます。名簿と保管場所の対応表は管理者だけが見られる場所へ置きます。湿気、直射日光、来客の目に触れる棚を避け、鍵のかかる書庫やキャビネットを使います。
Web勤怠は「サービスに残っている」だけでは足りない
クラウド型勤怠では、契約中は画面から見えても、解約後やプラン変更後に過去データを取得できないことがあります。保存可能年数、CSVやPDFの出力範囲、修正履歴の有無、退職者データの扱いを確認しましょう。毎月の締め後に確定データを出力し、賃金台帳と対応するファイル名で保管すると、サービス変更時にも記録が途切れません。
ファイル名は「2026-07_店舗名_勤怠確定」のように表記を統一し、上書きで履歴を消さないようにします。閲覧権限は給与・労務を担当する人に限定し、共有リンクを常時公開しないことも大切です。端末故障や誤削除に備え、元サービスとは別の場所にもバックアップを持ち、定期的に復元できるか確認します。
修正前の記録と承認の経緯も残す
打刻忘れや時刻訂正があったとき、確定後の数字だけでは変更理由が分かりません。修正前の時刻、申請者、申請日、理由、承認者、承認日を一緒に残します。紙なら訂正線と確認欄、Webなら監査ログや申請履歴が確認できるかを点検します。本人にパスワードを聞いて管理者が代理入力する運用は避けます。
履歴はスタッフを疑うためではなく、給与計算の根拠を説明するためのものです。「忙しかったため」のような曖昧な理由ではなく、「退勤打刻後にレジ差額確認を依頼され、18時22分まで対応」のように、事実と時刻を短く記録すると、後から勤務実態を確認しやすくなります。
廃棄は年1回、対象確認と記録をセットにする
保存期限を過ぎた記録を無期限に抱えると、保管場所だけでなく個人情報の漏えいリスクも増えます。年1回、廃棄予定台帳から対象を抽出し、管理者が期間と紛争・調査の有無を確認します。確認中の案件に関係する資料は、通常の期限だけで機械的に廃棄しません。
紙は内容を読み取れないよう裁断または機密文書回収を利用し、電子ファイルは本体だけでなく共有フォルダーや不要な複製も対象にします。廃棄日、対象期間、方法、確認者を台帳へ残せば、「何となく捨てた」「誰かが持っているはず」という状態を防げます。バックアップ側の削除方法や保持期間も、利用サービスの仕様に合わせて確認してください。
30分で作る保管ルールのひな型
最初から立派な規程を作る必要はありません。対象書類、保存年限、起算日の考え方、保管場所、閲覧できる役割、月次出力日、バックアップ先、年次廃棄日、廃棄方法の9項目を一枚にします。担当者名ではなく「店長」「給与担当」のように役割で書くと、交代してもルールが残ります。
作成後は、先月分のタイムカードを一つ選び、2分以内に表示または取り出せるか試してください。次に、修正履歴と対応する賃金台帳までたどれるか確認します。見つからなければ保管量を増やす前に、名前の付け方と置き場所を直します。保管の品質は箱の数ではなく、必要な記録へ安全に到達できるかで判断できます。
保管ルール確認チェックリスト
- 紙・Webの両方を含め、保存対象を一覧にした
- 対象期間、起算日、廃棄予定年月を記録した
- 閲覧できる役割と鍵・アクセス権を決めた
- 月次出力とバックアップの担当日を決めた
- 修正前後の時刻、理由、承認履歴を残せる
- 廃棄前の確認者と廃棄記録の様式を決めた
まとめ
タイムカードは、2026年8月時点では経過措置により当分の間3年の保存が必要で、本則は5年です。最新情報を廃棄前に確認し、職場の運用では5年を見据えた保管ルールを検討してください。紙は事業場・年・月で整理し、Web勤怠は確定データと修正履歴を出力します。起算日、権限、バックアップ、廃棄記録まで一枚にまとめれば、小さな職場でも「残っている」から「必要なときに説明できる」保管へ変えられます。
参考資料
法令や制度は変更される場合があります。廃棄前に最新情報をご確認ください。